イベント
2018年度名古屋大学「法整備支援の研究」全体会議/ASEAN法研究シンポジュウム
- 開催日時
- 2019年01月26日~2019年01月27日10:00~17:00
- 会場
- 名古屋大学・アジア法交流館(2階)アジアコミュニティフォーラム
- 主催
- 名古屋大学大学院法学研究科
名古屋大学法政国際教育協力研究センター(CALE)
- 後援
- 名古屋大学アジア共創教育研究機構(予定)
- 助成
- 科学研究費補助金・基盤研究(A)「ASEAN経済共同体構築による加盟国法へのインパクト」 、科学研究費補助金・基盤研究(B)「行政法の法典化と比較行政法の課題」
- 言語
- 英語・日本語(同時通訳あり)
ネットワークのなかの「統合」としてのASEAN経済共同体―現代東南アジア法の共通基盤?
東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations, ASEAN)は、その創設(1967年)から約半世紀を経過した2015年末に、ASEAN共同体の設立を宣言した。同共同体は、経済、社会文化、政治安全保障の三つの共同体からなるものであるが、最も注目されるのは、経済共同体(ASAEN Economic Community, AEC)である。AECは、人口にして世界第3位、経済規模において世界第5位の経済圏を形成するものである。
ASEAN共同体については、発足後すでに3年を経過したにもかかわらず、評価が大きく分かれている。それは、むしろ評価の基準についての一致がないことによる。ASEAN共同体を今日の地域統合の典型として欧州連合(European Union, EU)と比較すれば、組織としての統合の深度において大きく立ち後れていることは明らかである。経済統合枠組みとしても、本質的に関税同盟ではなく、自由貿易地域にすぎない、ということは基本的な違いである。また、法的な観点からすれば、とくに、意思決定がすべてコンセンサスによることとなっており、ASEAN共同体法というものが観念できるとしても、それはフォーマルにはすべて条約によってのみ構成される、ということとならざるをえない、ことは決定的に重要である。
しかし、経済統合を決意した先進諸国の集団によってスタートしたEUの60年後の姿と、もともと政治的に密接な協力のみを決意した発展途上諸国の集団が自由貿易地域に移行することを決意してから、約四半世紀後の姿と単純に比較することは、そもそも合理的とはいえない。また、ヨーロッパ統合が、グローバル化以前にスタートしたプロセスであるのに対し、ASEANの場合にはグローバル化の下で進展しているプロセスであることという違いは、強調しても強調しすぎることはない。
このように考えると、ASEAN共同体を評価するためのモデルとして、EUのような地域統合組織を想定することは、適当でないというべきである。これに代えて、本会議においては、ネットワークという言葉をキーワードとして、ASEAN共同体を見ていくことの有効性を検証したい。
ネットワークというモデルからASEANをみると、その二つの像が現れてくる。一つには、対外的にさまざまなアクターと結びついていく、ネットワーク形成の中核としてのASEANという側面であり、もう一つには、ASEANそれ自体、その実体は、その固有の諸機関および加盟国政府組織がさまざまにネットワーク的に結びついているものである、という側面である。
このように、本会議ではまず、ASEANが、対外ネットワーク形成主体として、また、対内的にもそれ自体緊密なネットワークとして、機能している実態に迫りたい。次に、ASEAN加盟国法の変動メカニズムに焦点を合わせる。ここでは、それが組織的決定ないし有機体内での調整プロセスとしてもたらされているというよりは、ネットワークのなかでのインタラクティヴなプロセスとしてもたらされているのではないか、という仮説を検証したい。最後に、グッド・ガバナンスという、グローバル化の中の共通目標をとりあげ、それがネットワーク・モデルの中で、どのように追求されていきているかを明らかにしたい。
プログラム
2019年1月26日(土)
09:30 | 開場・受付開始 |
10:00-10:15 | 開会挨拶 國分典子(名古屋大学法政国際教育協力研究センター長/教授)
趣旨説明 小畑郁(名古屋大学大学院法学研究科教授/ASEAN法科研代表) |
10:15-13:00
セッション1「ネットワーク・モデルのなかのASEAN――集権的組織なき統合」
10:15-10:40 | 司会 須網隆夫(早稲田大学大学院法務研究科教授)
基調講演:「ASEAN共同体構築の現段階」(25分)AKP Mochtan(ASEAN事務次長)(調整中) |
10:40-11:05 | 個別報告
ASEANの紛争解決手続(25分)山形英郎(名古屋大学大学院国際開発研究科教授) |
11:05-11:25 | コーヒーブレイク |
11:25-11:50 | 一帯一路イニシアティブと新しい時代のアジア秩序(25分)季衛東(上海交通大学凱原法学院教授) |
11:50-12:05 | 中国の開発政策のASEANにおける人権概念に対するインパクト(15分)Mattias Vanhullebusch(上海交通大学凱原法学院講師) |
12:05-13:00 | 質疑応答・全体討論 |
13:00-14:30 | 昼食 |
14:30-16:30
セッション2「東南アジア諸国法の現況――ASEANスタンダードまたはグローバル・スタンダードのインパクト」
14:30-14:45 | 司会 吾郷眞一(立命館大学衣笠総合研究機構教授
個別報告(各15分) タイの事例:西澤希久男(関西大学政策創造学部教授) |
14:45-15:00 | インドネシアの事例:島田弦(名古屋大学大学院国際開発研究科教授) |
15:00-15:15 | マレーシアの事例:桑原尚子(早稲田大学比較法研究所招聘研究員/国際協力機構イラク事務所企画調査員) |
15:15-15:30 | ベトナムの事例:杉田昌平(名古屋大学大学院法学研究科研究員/弁護士) |
15:30-16:30 | 質疑応答・全体討論 |
17:00-18:30 | 懇談会 |
1月27日(日)
10:00-12:00
セッション3「東南アジア諸国のガバナンス――ネットワークのなかのグッド・ガバナンスと規制改革――」
10:00-10:25 | 司会 佐藤史人(名古屋大学大学院法学研究科教授)
個別報告(各25分) インフラ整備のための公私共同のガバナンス―ASEAN加盟国の規制改革におけるOECDの役割 Jean-Isamu Taguchi(元名古屋大学研究員,LL.D. (Comparative Law, 名古屋大学)) |
10:25-10:50 | ベトナムにおけるグッド・ガバナンスと規制改革 Bui Ngoc Son(香港中文大学講師) |
10:50-11:50 | 質疑応答・全体討論 |
11:50-12:00 | 全体総括 小畑郁(名古屋大学大学院法学研究科教授/ASEAN法科研代表) |
12:00-13:30 | 昼食 |
13:30-17:00
スペシャル・フォーラム「アジア経済体制移行国における行政法の発展と課題」
13:30-14:15 | 基調講演「アジア市場経済移行諸国における法治国の創造とドイツ行政法の役割と課題」 Jan Ziekow(ドイツ・シュパイアー行政大学院教授) |
14:15-15:00 | 基調講演「グローバル(地域)空間に自生的に登場する共通の『行政法諸概念』と市場経済移行諸国の行政法法典化へのインパクト―アメリカ行政法整備支援の視点から―」Jeffrey Lubbers(American University Washington College of Law教授) |
15:00-15:20 | コーヒーブレイク |
15:20-15:40 | 個別報告(ウズベキスタン及びベトナム)(各20分)
「ベトナムにおける行政法の法典化の諸問題」Phan Thi Lan Huong(ハノイ法科大学講師) |
15:40-16:00 | 「ウズベキスタン行政法の法典化後における行政法の課題」Igor Tsai(ウズベキスタン・世界経済外交大学比較公法研究センター副センター長) |
16:00-16:55 | 質疑応答・全体討論 |
16:55-17:00 | まとめ 市橋克哉(名古屋大学法学研究科教授) |
連絡先:
名古屋大学 法政国際教育協力研究センター
e-mail:cale-jimu@law.nagoya-u.ac.jp